「私こそ、先生の善意を素直に受け取れなくて、申し訳なかったです。ごめんなさい」

先生が信じられない物を見るような表情を浮かべる。
何その表情? 私、変な事言った?

「初めて桜子に謝罪された」
「ちょっと待って下さい。さっきもごめんなさいって言いましたよね?」

フフッと先生が笑う。

「失礼。桜子に謝られる事に慣れていないので、過剰な反応をしました」
「普段から私が謝らない人みたいじゃないですか。私だって悪いと思ったら謝ります」
「悪いと思ったんですか?」
「心から思いましたよ。それに、先生が隣の部屋にいなくて寂しかったし」

ニヤッと先生が笑う。

「寂しかったんですか?」

先生に聞かれると悔しくなるのは何でだろう?

「……もう、この話はいいじゃないですか」
「やっぱり君は素直じゃない。でも、そういう所も好きですよ」

何という破壊力!
好きって言葉に腰が砕けそうになった。

頬も熱い。きっと真っ赤になっている。恥ずかしい。

これ以上、先生の膝の上は無理。立ち上がろうとしたら強く抱きしめられる。
先生の顔が私の肩に押し付けられて、また心臓が騒がしくなる。

「本当は桜子の気持ちを知った時、僕も好きだと言いたかった。でも、中途半端な状況で言っては君を不安にさせると思って言えなかった」

西園寺グループのお嬢様が浮かぶ。

「西園寺詩織さんの事ですか?」

先生が私の肩から顔を上げ、真っすぐに私を見つめる。