(わっ!航くんだっ)



廊下の柱の影に隠れてしまう。



(やっぱり気まずい)



私のこと、話しているみたいだし。



私には気づかず、
「うん、仲良いけど」
と、航くんが当たり前みたいに答えている。



(仲良いって思ってくれてるんだ……。嬉しい)



「隣のクラスの人でしょ?航の幼なじみ。カッコいいじゃんね?その妹ちゃんも可愛いんじゃん?」

「あ、私、知ってるー。その妹ちゃん、見たことあるよ。……まぁ、地味……?だよねー」



「えー、マジ?」と、ケラケラ笑う女子達。

私は影に隠れつつ、恥ずかしくて顔が赤くなる。



「別に関係ないじゃん」



航くんの声が不機嫌なものに変わる。



「まぁまぁー、地味でも可愛いんだよなー?」
と、男子のからかうような口調。



「あー、なるほどねー。可愛いんだー?」



女子も声が笑っている。



「航はその妹ちゃんが好きなんだ〜?」



思わず、柱の影から身を乗り出して、航くんの様子を伺ってしまう。



「!!」



航くんの表情は、険しかった。