「泣かないで偉いね」
と、航くんは優しく女の子の頭を撫でる。



そういうところ、本当に好きだなって思った。

航くんの優しさは。

心の中をあたたかく照らしてくれる。



「ケガしてない?」
と尋ねると、
「大丈夫」
と、女の子が笑った。



女の子は「あっ、電車!行っちゃう!」と、また走り出して、思い出したように立ち止まり、
「お兄さんとお姉さん、ありがとう」
と、振り返って言ってくれた。



「転ばないように気をつけてね」
と、航くん。



手を振ったら、女の子も手を振り返してくれて、また走り出した。





そのまま、航くんと家に帰ってきて。

私の部屋に入ってもらおうとすると、航くんは、
「いや、かのんの部屋は……、ちょっと」
と、ためらった。



(あ……、嫌なんだ)



ショックだと思った。



優しくしてくれることも。

私が幼なじみの妹だから、仕方なくしているんだよね?



心の中で。

寂しさが、どっと溢れて。



(あぁ、泣きそう……)