「あぁ、えっと、大学の頃の友達が、今店やってて。そこで取り寄せもらってるんだ。住所と名義は友達の。だから、俺がずっと飲んでることなんて知らないんだ」

「そうなんですか……」

「あー。ダサいよなー。コソコソと友達に頼んでまで。……引いた?」

ちょうどまた信号が赤に変わり、車が止まると、矢吹さんがハンドルの上を持っていた手に顎を置いて、そのままこちらを見つめながらそう聞いた。

うっ、何そのポーズ……。


私の顔色を伺うように遠慮がちな声。
可愛いくて、あざとくてずるい。

「いや、引くなんてそんな。ただ……可愛いなぁって」

「……それ絶対バカにしてるじゃん」

ムスッとする矢吹さん。

「し、してないです!」

慌てて反論する。バカになんてしていない。
純粋に、本当に、大人な矢吹さんの可愛い一面が見れて、嬉しいんだ。

「大人をからかうもんじゃない」

「だからからかってなんかっ、!」

「ふっ、冗談」

必死に訴える私を見て、矢吹さんが吹き出した。

「冗談って……」

「必死に対抗してくる梓葉がおかしくてつい」

「っ、もう……。今日、ちゃんと話せるといいですね」

「あぁ、ちゃんとできるかわかんないけど。梓葉のこともちゃんと伝えられたらいいなって思う」

矢吹さんはそう言って私の頭に手を置いて、優しく微笑んでから、再び運転を再開した。