矢吹さん、一体何が言いたいんだ。

私を大切にしたいから触れない、なんて。
そのせいで矢吹さんと距離を置くことになるなんてそんなの嫌だ。

わがままだとかやっぱり子供だと言われても、どうしようもない。

「梓葉のご両親に、ちゃんと挨拶したい」

「へっ、」

思っても見なかった矢吹さんのセリフに間抜けな声が出る。

え?どうして今の話の流れから、私の親のことが出てくるんだろうか。

「梓葉と会えなかった数日、色々考えたんだ。梓葉に触れるたんびに自分の中に出てくる罪悪感、別に悪いことしてるわけじゃないのにって言い聞かせるけど、どこか引っかかって……」

矢吹さんは大人で私はまだ高校生。

10歳も年が離れていると、その壁はやっぱり大きいんだ。
矢吹さんなりに、大人として、心の中に色々あるかもしれない。

「その罪悪感は、うちの両親に会って変わることなんでしょうか」

「ああ、すげー変わると思う」

不安になりながらたずねると、矢吹さんは、すごい落ち着いた笑顔を見せながらそう言った。