制服レモネード

「ったく、あいつ片付けもしないで帰りやがって……」

ドアに向かってポツリと呟いた矢吹さん。

『バーカ』

ほんと、夏穂さんが言うように、矢吹さんがあんな風に子供っぽく怒るなんて珍しい。

「梓葉、夏穂に変なこと言われなかった?」

「変なことなんて!何もないです!」

むしろ嬉しかった事ばかり。

矢吹さんが夏穂さんに私の話をしてくれてたこと。
私のおかげで矢吹さんが変わったと言ってもらえたこと。

「ふーん。なんかムカつく。ちょっと前まであんなに俺と夏穂のこと疑ってたのに。今はケロッとしてあいつと仲良くなったりしてるし」

矢吹さんはそういって、スタスタとリビングの方へと戻っていく。

矢吹さんやっぱり怒ってるよね。

大丈夫だっていってるのに、あんな風に嫉妬されて疑われて。挙句、何事もなかったように夏穂さんと普通にしゃべっちゃうんだもん。

「すみません……あ、お詫びと言ってはなんですが、お皿、片付けます」

彼の背中に向かってそう言うと「手伝わせるつもりだった」なんてぶっきらぼうにそう言った。

キッチンに立って、今日使った食器を洗う。

矢吹さんは怒っちゃってるけど、矢吹さんの部屋でこうしてお皿を洗うの、なんだかお嫁さんになった気分で、嬉しくなる。

カウンターキッチンから顔を上げて、テーブルを拭く矢吹さんをチラッと確認して。

また、改めてちゃんと謝ろう。

そう決めてから、再び、シンクに目線を落とすと。

ギュッっと、後ろから全身が包まれて、フワッと大好きな香りが広がった。

「ちょ、矢吹さんっ?」

「何もしねーとか言ったけど、無理に決まってる」

そう言って、さらに抱きしめる力を強めた矢吹さん。