僕の名前は、篠本楓(しのもとかえで)どこにでもいる“平凡”な高校生だ。今日は、楓が三年生になり、最初の一番大きなイベントだ。毎日特に変わり映えのない日々の中で年が変わり、一年生が入ってくるこの時期は楓にとっても特別な日なのだ。
 そして楓に一つだけ“平凡”じゃない所があるとするのならば、一人一人が持っている気持ちを【花】にして見ることが出来ることだろう。
 簡単にいえば、目が合った人の心を【花】が持っている【花言葉】で見ることが出来るのいうことだ。
 この現象は楓が物心ついて記憶がはっきりする頃にはもう現れていた。慣れたせいなのか、今ではそこまで気に求めていない。逆に身近な人が今どう思っているのか知ることが出来、便利と言えば便利だからだ。が、見知らぬ人の心を土足で覗くことになるので、なるべく知らない人が多いところでは目を合わせないようにしている。
 この現象があるからか、楓は花について調べるようになった。頭の上の【花】が【花言葉】を使って人の気持ちを表していると知ったのは、たまたま知っていた「美」や「愛」という意味を持つ薔薇の花を、父と母が結婚記念日の時に頭に咲かせていたからだ。それからも気になり、花言葉を調べ、その花言葉の意味がその人の気持ちと一緒なことに気づいた。
 それから楓は、いろんな花を調べ、それぞれの花言葉を手当たり次第に覚えては記録していった。