「……疲れた」


有斗にしては珍しい弱音だった。

何だかんだで仕事を楽しんでいるように見えていたので、こんなふうになる有斗を初めて見た。


「明日も朝早いの?」

「んー……まぁ、午前中には出る」

「何日にも渡って、大掛かりな仕事なんだね」


まぁ、と有斗が言葉を濁した。

これ以上は言えないということだろう。


代わりに、膝の上に置いた手のひらにそっと手が伸びてきた。

思わず肩を跳ねさせると、有斗が困ったように笑ってわたしの顔を覗き込んでくる。


「悪い、ちょっと充電させて」


眉をハの字にしていつになく頼りない声で有斗が言うので、胸がぎゅっと締め付けられた。

いつもの自信家な有斗の姿は、見る影もない。

わたしが小さく頷いたのを見て、有斗はほっとしたように表情を緩めた。

触れた指に、少しだけ力が込められる。


「……俺さ、別に仕事好きなわけじゃなかったじゃん。こんなこと言ったら怒られそうだけど、いつでも辞めていいって思ってたし」

「うん」