押し負ける未来はあっても、押し流される未来はあってはいけない。


「心配しなくても、幼なじみの延長でおまえの傍にいる気はねーよ」


ぽつぽつとネオンが輝く駅沿いの道を、有斗は迷いなく進んでいく。

車が通るたび、強い光に照らされては訪れる夜の気配に、わたしは有斗の静けさを感じた。


「押し切るつもりもねぇし、おまえの頭がついてきてないこともわかってる。でもそれは、俺がお前を求めない理由にはなんねー」

「なに、言って……」

「言ったろ、俺はもう我慢しないって。──覚悟決めたんだ。1からぜんぶ、俺の気持ちわからせてやる」


繋がれた手のひらが熱を持つ。

じわりと汗をかいた感覚があって、無性に振り解きたくなった。

けれど、有斗は強い力で手を離さない。


「そしたら、さすがのおまえも意識切り替えられんだろ?」

「……さすがのって、何」

「自覚ねーのかよ。鈍ちんにも程があるぞ」


言葉とは裏腹に、有斗の口調は歌うように朗らかだ。

これはいよいよ、本格的に腹を括ったってことなんだろうな、と他人事のように思う。