くるんとカールを描いたまつ毛を伏せて、穏やかに紡がれた結子の言葉を、わたしは噛み締めるように何度も反芻した。




結子の家を出て、近くの駅まで歩いている時、ポケットの中でスマホが短く震えた。

画面を見ると、悩みの種、その人からの連絡だった。


【今晩、暇?】


どきりと心臓が大きく跳ねる。

わたしと有斗の部屋は隣同士で、居留守は使えない。


【暇じゃないよ。テスト前だもん】

【藤堂の家でテス勉してたんだっけ】

【そうだよ】


連絡を返しつつ、駅を目指す。

辺りは薄暗くなり始めていて、行き交う車のヘッドライトに目が眩む。


【もう帰ってんの?】

【まだ。今帰り道】


文面だといつも通りのテンションでやり取り出来るから、わたしも落ち着いて返答ができた。

……と思ってたんだけど。


「よ。お疲れ」


最寄駅の改札を出たところで、スマホ片手に柱にもたれる有斗がいた。

突然の登場に、わたしは目を瞬きさせる。


「有斗? なんで……」

「俺もちょうど仕事終わりだったから。もうすぐ着くだろーなと思って、待ってた」