「大丈夫、わかってるよ〜。みーちゃんは今、ちょっとパニックなんだよね?」


小さい子をあやすような柔らかい口調が、わたしを素直に頷かせる。

思いがけない出来事に、わたしは今いっぱいいっぱいになっている。


「必死で取り繕ってるけど、明らかに有斗くんに対してぎこちないもんねぇ」

「普通にしようって思ってるんだけど、思えば思うほど普通がわかんなくなっちゃってて」

「2人ってプライベートでもずっと一緒だったと思うけど、有斗くんはどうなの? 何か変わった?」

「……それが……」


わたしを更なる混乱に陥れているのは、他ならぬ有斗だ。

が……我慢出来ない宣言の後から、存在すらも知らなかった有斗のネジはどこかへ行ってしまっている。


悩みに悩んで、意を決して朝起こしに行ったら……布団の中から腕を引かれたし。

晩ご飯の準備をしてたら、横からちょっかいをかけてきて、その、距離も今までよりかなり近かったし。

そ、それとなく……わたしを呼ぶ声のトーンが変わったような気もするし……。


「……有斗くん、完全に遠慮なくなってるねぇ」