「そうなの。帰ってお風呂入ったら、もうすぐに眠れちゃう」
だから断っておいて、と言うと有斗は小さく頷いた。
家の前に着いて、わたし達は向かい合う。
「じゃ、また週明けね」
「ん」
門の前で別れて、鞄から鍵を取り出す。
大丈夫。いつも通りだった。
いつもみたいな、なんてことない幼なじみのわたし達だった。
鍵を開け、明かりの灯らない家に足を踏み入れた瞬間──扉が閉め切るよりも先に、全身が大きな温もりに包まれた。
肩に重みが加わって、熱い吐息が耳を撫でる。
暗がりの中でふわりと鼻先を擽る香水は、いつもより濃密に感じて。
「ある──」
「悪いけど、俺、もう我慢しねぇから。──覚悟しといて」
唸るような声が耳元で響いて、全身の脈が波打った。
温もりが離れて振り返った時には有斗はもういなくて、まだ耳に残る熱を感じたまま、わたしはその場に立ち尽くした。
ずっと一緒だった幼なじみにとって、わたしはただの幼なじみじゃないのかもしれない。
──なんて、どんな顔をして相談すればいいのかわからない。
だから断っておいて、と言うと有斗は小さく頷いた。
家の前に着いて、わたし達は向かい合う。
「じゃ、また週明けね」
「ん」
門の前で別れて、鞄から鍵を取り出す。
大丈夫。いつも通りだった。
いつもみたいな、なんてことない幼なじみのわたし達だった。
鍵を開け、明かりの灯らない家に足を踏み入れた瞬間──扉が閉め切るよりも先に、全身が大きな温もりに包まれた。
肩に重みが加わって、熱い吐息が耳を撫でる。
暗がりの中でふわりと鼻先を擽る香水は、いつもより濃密に感じて。
「ある──」
「悪いけど、俺、もう我慢しねぇから。──覚悟しといて」
唸るような声が耳元で響いて、全身の脈が波打った。
温もりが離れて振り返った時には有斗はもういなくて、まだ耳に残る熱を感じたまま、わたしはその場に立ち尽くした。
ずっと一緒だった幼なじみにとって、わたしはただの幼なじみじゃないのかもしれない。
──なんて、どんな顔をして相談すればいいのかわからない。



