グラウンドにピストルの音が鳴り響く。


「先輩、いけー!」

「わはは、こけるなよー!」


辺りから様々な人の声が上がる。

今日、2回目だ。すぐそこにあるざわめきが、遥か遠くに感じるのは。

音楽と声援と共に、バトンが次々に渡っていく。


「次、有斗くんだ!」

「頑張ってー!」


黄色い声援の中で、有斗にバトンが渡る。

全学年と、先生チームで行われているリレー。前方には、1年生と2年生の走者が走っている。


「え、有斗先輩めちゃくちゃ足速くない!?」

「部活とかしてないよね!?」


ぐんぐん前の走者との距離を詰めていく有斗は、わたしにとってただの幼なじみで、それ以上でもそれ以外でもなくて。


1年生の背中を捕まえたと思ったら、難なく2年生をも抜いてしまう。

有斗は1位で次の走者へとバトンを繋ぎ、グラウンドのあちこちから歓声が沸く。

トラックを1周駆け抜けた有斗はTシャツの裾で汗を拭って、こちらを──見間違いでなければわたしを、真っ直ぐに見据えた。


グラウンドでは引き続きリレーが行われていて、まもなくアンカーにバトンが渡る頃だったけれど、わたしは視線の先にいる幼なじみから目を逸らせずにいた。