結子の声に顔を挙げると、入場口から有斗がグラウンドに入ってきているのが見えた。

体育祭も終盤、学年対抗のリレーだ。

列の後方には、他にも知った顔がある。


「有斗くん、リレーメンバーに選ばれた時は面倒くさそうだったけど……なんか、気合い入ってない?」

「そ、そうかな」

「うん。なんかメラメラして見える〜」


軽い口調で言う結子に、わたしは愛想笑いだけをかろうじて返す。

結子が言うようにメラメラしているとしたら、その矛先は、後ろの方にいる谷瀬くんに向けられているように見えた。


各クラス、男女1名ずつ。

全クラスを合わせて、ひと学年16人が走る。


「有斗のやつ、リレーなんか出たらまたキャーキャー言われるぞ」

「あはは、ほんとだよねぇ。足も速いとか、天は二物を与えすぎだよ〜」


2人の会話をぼんやりと聞きながら、グラウンドをじっと見つめる。

前から数えて、と言うよりも後ろから数える方が早い。有斗は14番目の走者だった。


「1年生のアンカー、みーちゃんと委員会同じ子じゃない?」

「え? ……あ、ほんとだ」