幼なじみの不器用な愛し方

「最低限のセルフプロデュースは出来るみたいでよかったわ。クールなんて言葉じゃ片付かない。ファン減るよ、その仏頂面」

「うるせー」


一向に立ち上がる気配もないので、わたしは溜め息を吐きつつ有斗の隣に腰を下ろす。

もうみんな教室へと戻っていったのか、辺りに人影はなかった。


「ご飯食べないと午後から頑張れないよー」

「……先戻ってれば」

「そんなことしたら、あんた絶対戻ってこないでしょ。それで、しれっとお昼休み終わってからご飯食べに行ったりすんの」

「……よくわかってんじゃん」


有斗の声に僅かに笑みが混ざる。


「呆れた。そんなことわかったって嬉しくないんですけどー」

「そう? 俺は嬉しいけど」

「……え──?」


思いもよらない言葉に、反応が遅れた。

顔を上げるよりも先に、隣から伸びてきた手がわたしの手を掴む。


「俺は嬉しいよ。美月しか知らない、俺がいること」

「え……あ、有斗……?」


わたしの手を掴むのとは反対の腕に顔を埋めていて、表情は見えない。

けれど、まとう空気はいつもと少し違って見えた。