恐らくまだ成長過程とはいえ見上げる背丈に、袖から伸びる腕は案外筋肉質。

そこに人懐っこさも加われば、それはもう、女子の人気を集めていることだろう。


「美月先輩も、制服とはまた違った爽やかさでいいですね」


にかっと笑って、谷瀬くんはわたしの隣の席に腰を下ろした。

眩しすぎて、思わず目を細めてしまう。

恐ろしいな、この大型わんこ……!


そうこうしているうちに、グラウンドの入場門の方では男子生徒が集まっているのが見える。

1種目目は……男子の騎馬戦かぁ。

終わったら擦り傷なんかを作った子達が殺到しそうだな、なんて思う。


「……あれ。谷瀬くん、怪我してる」


ふと薬箱のほうに視線を投げると、クラスメイトに手を振る谷瀬くんの腕に傷を見つけた。

血が滲んでいる。今さっき出来た傷みたいだ。


「え? ……あぁ、これですか? 開会式の後、門のところ通る時に誰かとぶつかっちゃって。門のパネルで擦りむいたんですよねー」


門のパネルは木で出来ていて、先日わたし達がいろんな模様を描いたりして彩った。