学校に近付くほどに、視線の数は増えていく。


「有斗くん、今日来てるんだ!」

「朝から会えちゃった! ラッキー」


飛び交う黄色い声、声、声。

これにわたしが慣れるのも、ヘンな話だよなぁ〜。


「今日から新入生がいるわけだし、しばらくはまた大変だね、有斗センパイ」

「……うっせーよ」


わたしがからかってやると、有斗の眉間にシワが寄る。

輪の中心にいるくせに注目されるのが嫌いなことは、昔から変わってない。


だからこそ、スカウトを断らずに事務所に所属すると聞いた時はすっごくびっくりした。

有斗の容姿が並外れていることはわたしも理解してたけど、芸能界なんていう華々しい世界を1番毛嫌いしていると思ってたから。


中学3年生になる頃に事務所が同じアーティストのMVに出演して、有斗を取り巻く環境は大きく変わった。

それまではただ目立つ存在だった有斗が、一気に芸能人として同級生や下級生から見られるようになった。

その時の学校の混乱は凄まじいもので、先生達はてんやわんや。噂を聞きつけた他校の生徒までもが中学校に押し寄せる始末だった。

そんなことがあったから、てっきり芸能科のある高校に行くのだと思ってたんだけど……有斗が選んだのは、わたしと同じ地元の中堅私立高校だった。