ツジのにこやかな笑みが一瞬ひくついたように見えたけど、気付かなかったふりをしよう。

それか、見間違いだ。


「この写真、マリーンランド?」


ツジが有斗に向けたスマホの画面には、見覚えのある写真が表示されていた。

水族館で、わたしが撮ったものだ。


「うん。この前行ってきた」

「ふーん」


ツジの視線がこちらに向けられるので、わたしは笑いながら小さく頷いておく。

すると彼は意味深な笑みを浮かべて、スマホをポケットにしまった。


もう間もなく予鈴、というところで、教室の入口に見知った姿が見えた。

その人の姿を認めたのとほぼ同時に、


「美月先輩!」


と名前を呼ばれる。

あまりに溌剌とした声に、周囲の視線が一直線に注がれた。

しかし、それを気にするそぶりもなく、わたしに向かってぶんぶん手を振っている。


「谷瀬くん! どうしたの?」


三年生と一年生とじゃ、フロアが違うのに。

予鈴まで時間がないので、わたしは慌てて谷瀬くんに駆け寄った。