「何買うの?」

「見て決める」


言いつつ、有斗は迷うことなく店内を進んでいく。

その間にも周りの女の子の視線を集めている幼なじみの背中を、わたしは慌てて追った。



アトラクションを片っ端から堪能し、家に帰り着く頃には空はすっかり暗くなっていた。


「疲れたけど、楽しかったー。ありがとね、有斗」

「ん」


門の前に着き、じゃあまた明日、と別れようとした時、有斗が手に持っていた大きな袋を差し出してきた。


「やる」


……え?

有斗は短くそれだけを言って、ふいっと顔を逸らした。

わたしは、思いがけない出来事に目をぱちぱちと瞬かせる。


「それ、自分用じゃなかったの……?」

「んなわけあるか」


大きな袋の中身は、大きなクラゲのぬいぐるみだ。

足を止めたショップで、すぐに購入を決めていた。

そういう類のものを欲しがるタイプじゃないので、わたしは思わず、それ買うの?と聞いたけど、そのとき有斗は何も言わなかった。