「有斗がすぐに起きてくれてたら、いつもこんなギリギリにはなってないの!」

「美月が朝飯食うの遅いからだろ」

「この期に及んでまだわたしのせいにする!?」


駅までの道を、いつものように言い合いながら歩く。

すれ違う若い人達は有斗の正体を疑いながら視線を向け、そうでない人達もまた、有斗の整った顔に一度は目を留める。

うーん、こんなこと自分で言うのも悲しいけど、有斗の隣を歩いてると、わたしなんてジャガイモにしか見えてないんだろうなぁ。


「あ、そうだ。ビーフシチュー、やっぱ明後日にして」


ふと、思い出したように有斗が言う。
 

「いいけど、なんで?」

「明日、泊まりがけで撮影なの忘れてたんだよ。学校休んで、朝から」


おお、さすがの多忙さ。


「わかった。頑張ってね」

「おー。明後日の夜には帰ると思うから」

「お土産期待してるね」

「アホか」


隣から伸びてきた手に頭を小突かれる。

昔はわたしの方が高かった身長も、今や頭1つ分以上、有斗の方が高い。

いつからこんなに差が開いたのやら……。