視線の先で、谷瀬くんの笑顔が弾ける。

あまりに突然の照射に、思わず目が眩みそうになった。

……恐るべし、期待の新入部員くん。


「もちろん。好きなように呼んでくれていいよ」

「よしゃ! 改めてお願いしますね、美月先輩!」


昇降口に行き着き、じゃあ俺こっちなんで!と谷瀬くんが颯爽と去っていく。

その後ろ姿を見送って、自分の靴箱に足を向けた時──


「っ!?」


突然、後ろから首元のシャツを引っ張られた。

驚いて勢いよく振り返ると、


「な……何すんのよ!?」


そこには有斗が立っていて、わたしを無言で見下ろしていた。

その目は……え、なんか怒ってる?


わたしが眉を顰めても、有斗は何も言わない。

とはいえ、この暴挙に理由を求めないと気が済まない。

人の多い昇降口で無言で対峙するわたし達の横を、呆れた様子で通り過ぎたのはツジと結子だ。


「いきなり引っ張るのはよくないよ〜有斗くん」

「まぁでも、わからんでもねーな。知らねーぞ〜」