「ごめんごめん、なんでもないの」


不思議そうにする2人に、わたしは曖昧に笑いかける。

普段、有斗から電話がかかってくることは滅多にない。

あったとしても、本当にしょうもないことだったり、無茶振りだったり……。

結子やツジならまだしも、真由美ちゃんとメグちゃんの前だ。いつもの調子で話して、引かれちゃっても嫌だし。

っていうか、遠い南の島にいるはずなのに、わたしの生活から全然消えないんですけど……。




『なんで出ねーんだよ』


家までの道のり、折り返した電話に出るなり聞こえてきたのはぶっきらぼうな声だった。

すっかり暗くなった道を歩きながら、わたしは眉毛をきゅっと寄せる。


「なんでって、こっちにだって都合はあるんだから。勝手なことばっかり言わないで」


思わず声に険がこもったけれど、電話の向こうにある彼には大して効果がないことはもうわかっている。


『せっかくビデオ通話にして見せてやろうと思ったのに』

「見せる……?」