幼なじみの不器用な愛し方

「谷瀬くん……」

「お久しぶりです。卒業、おめでとうございます」


久しぶりに面と向かって相対する谷瀬くん。

少し背が伸びたかな。雰囲気だって、大人っぽくなったね。


「ありがとう」


何度伝えたって足りないくらいの感謝が、胸に広がる。

折れそうだったわたしを支えてくれた谷瀬くんは、これからもっと頼りになって、これから入ってくる後輩達に慕われるんだろう。


「おれ、この高校に入って、実行委員になって、美月先輩に出会えて本当によかったです。美月先輩のこと、好きになれて幸せでした」


桜はまだ咲かない。

3月になったばかりの世界の空気はまだ冷たくて、澄んだ空気はぴりぴりと頬を刺す。

だけど暖かく感じるのは、空高く昇った太陽のせいだけじゃなくて、谷瀬くんが明るく照らしてくれるからだ。

そこに、今も尚燃えるような熱がなかったとしても。


「春からの大学生活、頑張ってくださいね。歯科衛生士さんになって、いつかおれの歯の虫歯チェックしてください」


唐突に戯けた谷瀬くんに、わたしは思わず笑ってしまった。

堪えていた涙が、その衝撃で弾き出される。