屋上のペントハウスの陰で身を寄せ合って言葉を交わしていると、ジト目の有斗が覗き込んでくる。


「来てくれたことは感謝してっけど、近すぎんの禁止だから」


それだけ言って、また日差しの下へと戻っていく。

わたしと菊池は顔を見合わせて、お互いに小さく吹き出した。


昨日有斗は、今日ここで彼女と会う約束を取り付け、証拠と共に自白させる予定だと言った。

ついていくと言うと有斗はすぐにそれを却下したけれど、当事者はわたしなのだと食い下がると、渋々折衷案を提示してきた。

それは、他の誰かを同席させて、陰から見てるというもの。

わたしがいることで逆上されても困るという判断で、他の誰かに同席してもらうのは、たぶん有斗の優しさからだと思う。


結子もツジもまだ受験が終わっていないし……と考えを巡らせて、思い浮かんだのが菊池だった。

頼り甲斐もあるし、吹聴しないという信頼もある。

わたしがそう言うと有斗は少し嫌そうな顔をしながらも、自ら電話をかけて、菊池に説明とお願いをしたのだった。


「寒いねぇ」

「そうだなー」

「でも、卒業まで後少しだね」