周りには下校していく生徒がちらほらいるけれど、やっぱり怪しげな影は見つけられない。

わたしは奥歯をぐっと噛み締めてから、メモに手を伸ばした。




「やっぱ、俺がいない時に仕掛けてくるんだな」


夜。部屋を訪ねたわたしを出迎えた有斗は、息を吐きながらメモに視線を落とした。

そこには、[いい加減有斗くんから離れなよ]と乱雑な字で書かれている。


「離れろとか、他人に……しかもこんな姑息な手を使うやつに言われたくねーんだけど」


あからさまに嫌な顔をする有斗に、わたしは内心息をつく。

これは怒っていいことだったんだ。わたしが1人で処理できなくたってよかったんだ。


「んー……やっぱ3年だと思うんだよなー……」

「やっぱり、そうなのかな?」

「初めは几帳面に書いてたのが、こんなに荒れてるわけだろ? もちろん一概には言えないけど、ストレスの要因として時期的にもしっくりくる」


神妙な面持ちで語る有斗。わたしだけじゃ、絶対に繋がらなかった発想だ。


「差出人を突き止めたら、却って追い詰めちゃうことになるのかな……」

「いやいや。お人よしにも程があるぞ。どんな理由があったって許されることじゃねーよ」