「……そんなことに慣れさせてごめんな」

「しょーがないよ。わたしの隣には、生まれた時から神崎有斗がいたんだもん」


だから本当に平気だったの。嫉妬されて、遠くから敵意を向けられることくらい。

でも、でもね。


「有斗と距離ができた時、このメモは確実にわたしの嫌なところを衝いてきたんだよね。自分でもちょっとびっくりしちゃうくらい、動揺した」


明確に心を折りに来た。鋭く磨がれた悪意は、わたしに苦手意識を植え付けるには十分だった。

そして有斗と仲直りして再開された嫌がらせ。それが今日、一線を超えた。


「ごめんな。1人で受け止めようとしてくれてありがとう」


うん。と素直に頷く。

無駄な虚勢だったのかもしれないけれど、有斗が肯定してくれたことで報われた気がした。


「犯人に心当たりは？」

「特に。有斗のこと好きな女の子なんて、学校中にいるだろうしね。むしろ有斗は？　過激な子とかいない？」

「……ぼんやりとしか覚えてねーけど、決定的にやばそうなやつがいた記憶はないな」

「そうだよねぇ……」


あれだけ周りを取り囲まれて、ぼんやりとしか覚えていないというのも有斗らしいな。