お互いに口数が少ないまま帰路について、家まであと少しというところで有斗がわたしの手を取った。

神崎有斗だとわかる姿で手を繋ぐと思っていなくて、顔を上げたけれど有斗はやっぱり何も言わずにわたしの手を引いた。

大きな手のひらがぎゅっとわたしの手を包み込んでいて、少しだけ、泣きたくなった。



「お願いだから、隠さずに話して」



有斗と一緒に帰り着いて、わたしの部屋で制服姿のまま向き合う。

ベッドの傍らに座り込む有斗はまっすぐにわたしを見据えていて、どれだけ心配をかけているのかが伝わってきた。



「あんなことをされるのは初めてか?」

「……あそこまであからさまなのは初めてかな」

「じゃあ、今までは?」


勉強机の引き出しからジップロックを取り出して、中身を出す。
  
それを無言で差し出すと、有斗は中を確認して眉を顰めた。


「初めて入れられたのは……有斗が出てたドラマが放送された直後だったかな。これくらいのやっかみなんてどうってことないって、初めは気に留めてなかったんだけど」

「……明らかに、俺らのこと観察してるな」


メモをめくっていた有斗の手が、あるところで止まる。