幼なじみの不器用な愛し方

有斗の口から重く吐き出された息に、わたしは思わず肩を跳ねさせた。

そんなわたしを見て、有斗がはっとしたような顔をしてから眉尻をきゅっと下げる。


「……今、他に履いて帰れる靴ある?」

「……この上靴くらいかな」

「じゃあ……俺がダッシュで代わりの靴を買いに行って戻るのを待つのと、俺と揃って上靴で帰るの、どっちがマシ?」


え……。

絞り出すような有斗の声は苦しそうで、表情だって痛々しい。


「彼氏としては、今この状況で1人にしたくないんだけど」


有斗はうつむき加減に、周りに聞こえないくらいの声量でぽつりと呟いた。

胸の奥底の方から迫り上がる感情があって、それはわたしを素直に頷かせる。


「卒業まであと少しなのに、新しい上靴買わなきゃいけなくなっちゃうかもね」


あえて明るく言ってみせると、有斗は少しだけ顔を歪めて笑った。




上靴の靴底の薄さは、アスファルトを歩くとより顕著に感じた。

普段街中で見かけることのない上靴は周囲の視線を集めたけれど、同じように上靴を履いてくれた有斗のおかげであんまり気にならなかった。