怪訝そうな視線を向けられて、笑って誤魔化す。

と、おでこをこつんと小突かれた。


「まぁ、そういうことだから。明日、置いてくなよ」


そんなこんなで、3学期に入って初めて、始業式以外で有斗と一緒に登校することになった。




久々に学校の最寄駅に降り立った有斗は、注目の的だった。


「有斗先輩今日来てるの!?」

「1本遅い電車に乗ってよかったー!」


黄色い声を浴びながら、有斗はいつも通り気に留めることなく学校の門を潜った。

それから教室に足を踏み入れ、既に登校してきていた唯子とツジに、都心のターミナル駅で買った洋菓子を差し入れした。

試験を終えた2人は喜び、試験内容に触れ、それからまたテキストに視線を戻した。

目的を達成した有斗もまた、大学から課されている入試前の課題に取り組んで、滞りなく1日は終わる。

──はずだった。




「…………え?」


放課後、帰宅しようと昇降口に降りて靴箱を開けると、信じられない光景を目にした。


「なに、これ……」


靴箱の中に置いていた、踵のすり減った履き慣れたローファー。