学校に到着すると、昇降口は人でごった返していた。

少しの熱気を感じながら進んで、自分の靴箱を開ける。


──瞬間、心臓が嫌に大きく跳ねた。


「……っ」


上靴の上に乗せられた、綺麗に折り畳んだ紙。

久しぶりに見るそれは、以前わたしの心を容赦なく折ったものだ。


「美月?」

「……っ!」


後ろから声を掛けられて、わたしは思わず肩を跳ねさせた。

咄嗟に靴箱を閉めて振り返ると、既に靴を履き替えた有斗が怪訝そうにわたしを見ていた。


「どうした?」

「……ううん、何でもない」


慌てて笑顔を作って、有斗からメモが見えないようにして素早く靴を履き替えた。

まだ不思議そうにしている有斗の背中をぐいぐいと押して、教室までの道を進んでいく。


有斗との関係が修復して、仲直りしたことを周知した時点で覚悟はしていた。

あの悪意を再び向けられること。


だけど、この恋を守るためには、こんなことで心を揺らしてはいられないんだ。

あの時とは違う。わたしは、大丈夫。

そう言い聞かせて、チリッと燻りかけた痛みを飲み込んだ。