「ふふ。こんなところ、お母さん達が見たらびっくりするだろうねぇ」

「……俊哉くんだったら、ぶっ飛ばされるかも」

「それはないんじゃない? 有斗とお父さん、仲良いじゃん」

「それとこれとは別だろ」


仲直りしたことは伝わっているけれど、うちの親も有斗の親も、わたし達の関係性が変わったことはまだ知らない。


「ほんとはすぐに報告すべきなんだろうけどさ、反対されたら立ち直れねーから。せめて、卒業するくらいまでは内緒にさせて」


なんで卒業まで?という問いに、有斗は悪戯っ子のように笑うだけで答えなかった。





補講期間最終日、誕生日の振替として、有斗は美術館に連れて行ってくれた。

ちょうど世界的に有名な画家の展示が行われていて、わたしが前々からチェックしていたところだった。

深めのバケットハットと大きな伊達メガネで顔を隠しながら、有斗は無邪気にわたしの手を引いた。

手を繋いで外を歩くなんてこれまでにはなかったことで、とってもドキドキしたのはひみつだ。


夜は小洒落た全席個室のレストランを予約してくれていて、そこでプレゼントまでくれた。

若い女の子に人気のアクセサリーブランドの袋には細長い箱が入っていて、蓋を開けるとシルバーチェーンと色違いの小さなダイヤモンドが3つ連なったトップのネックレスが鎮座していた。