本人がどう思っていようと、有斗はもう立派な芸能人だ。


「むしろ、お付き合いを反対されなかっただけよかったんじゃないかなぁ」


スカウトされたときからわたしとも面識があるとはいえ、マネージャーの近藤さんにとってはブレイク寸前の有斗に彼女が出来たなんて話はきっと喜ばしいことじゃない。

別れなさいって言われちゃっても不思議じゃないくらいなのに……。

わたしが考えていることが読めたのか、有斗はいじけた表情を崩さないまま視線を明後日に投げた。


「それは、まぁ……俺が美月のこと好きだって、近藤さんずっと知ってたからな」


思いがけない言葉に、わたしは目を丸くする。


「そうなの?」

「……なんだよ。笑ってんなよ」

「えー? 笑ってないよ」

「口元緩んでんぞ」


有斗がむぎゅっとわたしのほっぺを摘むけど、ぜんぜん力がこもってないよ。


だって、しょーがないじゃんね?

近藤さんが前から知ってたんなら、きっとすごく浮かれて報告したんでしょう。

でも有斗はかっこつけだから、なんでもない顔して言うの。