言葉を選んでいたつもりが、つい、口が滑る。


「わたし以外の人と、仲良くしないで……」


声に乗せた瞬間、腕を引かれた。

何かが視界を覆い尽くし、鼻先を有斗の細い毛がそよそよとくすぐる。

手のひらと似た熱を唇に感じたと認識した刹那、引かれた方とは逆の手が頬に添えられた。


「……っ!?」


ドラマや漫画で見たのとは、ドキドキの度合いも、込めた感情も、何もかもが違った。

ゼロ距離で、熱を帯びた潤んだ瞳がわたしを映し出す。


「へ……」

「……くそ。嘘じゃねーって信じるより先に、動いちまった」

「え……」

「心配しなくても、俺の人生はおまえだけだ。……だから、あんま可愛いこと言うな」


離れた唇がまた触れて、わたしはそっと目を閉じた。

少し濡れた唇から有斗の熱が伝わって、わたしの心臓はバクバクと大きな音を立てている。


こんな日が来るだなんて、想像もしていなかった。

夢なんじゃないかって、今度はわたしが思ってしまうよ……。




日が沈み、辺りが真っ暗になる頃。

インターホンの音が家に鳴り響いた。