幼なじみの不器用な愛し方

有斗の部屋に行き着いて扉を開けようとした、その時だった。


「──ん、あぁ」


熱を含んだ気怠げな声が扉の向こうから聞こえて、わたしは慌ててブレーキをかけた。

有斗? 起きたの……?


「……約束は日曜だろ? それまでには治るから……」


気安い口調。ツジと電話してるのかなぁ。

勢いがしゅるしゅると萎んでいくのを感じながら、何となく扉の前で耳をそばだててしまう。

電話が終わったら中に入ろう。ちゃんと謝って、それから──


「……あぁ。じゃあな、──上原」


熱っぽい有斗の声で紡がれた4文字に、わたしの心はピシッと凍りついた。

今……上原って、言った……?


わたし達はずっと一緒にいたんだ。

考えるよりも先に思い出が蘇ってくるくらい、ずっと。

有斗の友人関係だって、よく知ってる。

こんなふうに電話するような、恐らく休日の約束をするような友達の中に、上原なんて人は今までにいなかった。


でも、今は──


『上原です! メグって呼んでね』


心地よく響いた高く澄んだ声。