先に戻ってるね、と結子が言うので、わたしは2人に歩み寄った。


「どうしたの2人して」

「美月先輩に会いに来たんです。そしたら悠馬さんが通りがかって、捕まってました」

「捕まってたのは俺だろ」


菊池が谷瀬くんの頭にチョップをお見舞いする。

いてっ、と大袈裟にリアクションをする谷瀬くんは、あの一件以降、わたしを気にかけてたまに様子を見に来てくれるようになった。


「ごめんね、空き教室でお昼食べてたの」

「そうかなーと思ってました。すみません、来るとき先にメッセージすればよかったですね」


わたし達の会話を聞きながら、感心したように菊池が息を吐いた。


「琉輝のその怖いもんなしなとこ、すげぇよな」

「え?」

「俺が1年の時は3年のフロアなんか怖くて行きたくなかったし、最強の番犬に立ち向かおうなんて気すら起きなかっただろうし」


どういうこと……?

首を傾げるわたしをよそに、谷瀬くんは得意げに口角を持ち上げている。