支えてくれる手をそっと離す。

まだ涙は止まってくれなくて、俯いて隠した。


「まだ部活終わってないんでしょう? 練習中に通りかかったの? 声をかけてくれてありがとうだけど、あんまり戻らないでいると怒られちゃうよ」

「あんな悪趣味なメモのせいで、美月先輩が泣いているのを見過ごせるわけないじゃないですか……!」


離したはずの手を、再び掴まれる。

優しく、だけど力強く。


「メモにあった言葉って……神崎先輩との現状に対してですよね? もしかして、あんなメモが届くの、初めてじゃないんじゃないですか」


的を射た言葉に、わたしの肩はびくっと震えた。

うまい返し方がわからなくて、黙り込んだことが既に答えになってしまった。

有斗との関係に嫉妬した誰かから、わたしは攻撃されている。


「……噂で聞きました。神崎先輩との仲が拗れてるの、おれのせいですよね。おれが美月先輩と出掛けたって知って、神崎先輩怒ったんですよね」

「谷瀬くんのせいじゃ……」

「いいえ、おれのせいです。少なくとも、今ここにあるメモはおれにも一因があるじゃないですか」