「おー、今日もすげーなー。迂闊に近寄れねーや」

「増えたよねー、最近」


ふらりとわたしの席にやってきたのは結子とツジで、その口調はお互い風船のように軽い。

2人が仲のいいカップルである理由だろうな、と思いつつわたしは視線を手元のテキストから上げない。


「さっき出たばっかりの課題にもう取り掛かるなんて、みーちゃんってば優等生すぎるよぅ」

「……だって、暇だし」


絞り出した声は自分でもわかるくらいに頑なで、そんな自分が嫌になる。

結子とツジは気にする様子もなく、わたしの視界に入るようにしゃがみ込んできた。


「元気出せよー、秋山。湿っぽすぎて、このままだとキノコ生えてきそうだぞ」

「ほんとだよー。せめて髪の毛のカーテン開けてよぅ」


茶化しているようにも聞こえるけれど、本気で心配をかけている。

そのことに申し訳なくなって、また唇を引き結んでしまう。


「ね、有斗くんってN大受けたんだよね? わたし達も受ける予定なの」

「お互い受かったらいいよね。学部違っても、一般教養とかなら同じ授業とれるし、有斗くんが仕事でも課題とか手伝えるだろうし」