──どうしよう、最悪だ。

その隣にいた真由美ちゃんがひどく怯えた顔をして、視線を辿ると、


「……っ」


怒ったような、傷ついたような、一言では表せない感情を浮かべた有斗が振り返ってこちらを見ていた。

それは、ずっと一緒にいたのに初めて見る表情で、わたしの心に深く深く突き刺さる。


「メグちゃん!」

「へ? あ、あれ……?」

「待って有斗……!」


何も言わずに教室を出て行った有斗の背中を、わたしは竦んだ足を奮い立たせて、慌てて追いかけた。

人の流れに逆らって、有斗は大股で人気のない渡り廊下の方へと歩いていく。


「ねぇ、待って有斗……っ」


わたしの呼びかけにようやく足を止めたのは、人気から完全に切り離されてからだった。

有斗が振り返ることはなく、わたしはどうすればいいのかわからず言葉を必死に探す。


「えっと、あの──」

「気ィ遣って追い掛けてくれなくていいよ」


随分と冷たくなった空気に、凍えるような冷ややかな声が落ちた。

瞬間、心臓が一気に冷却されたような息苦しさを覚える。

やだ、待って、違うの。