ほっとして、いつも通りを心掛けながら、靴を履き替えた有斗と一緒に教室に向かう。


「有斗の試験、今週末だよね? 土曜日だっけ?」

「うん、そう。今度は面接と小論文」

「小論文はまだしも、面接は余裕そうね」


話しているうちに教室に着く。

半分ほどが登校してきている教室の中に、真由美ちゃんとメグちゃんの姿を見つけた。


「おはよう。珍しいね、メグちゃんがうちのクラスにいるの」

「おはよう美月ちゃん。忘れ物しちゃって、まゆみんに借りに来たんだ」


メグちゃんが掲げたのは英語の教科書で、教科担当が同じ先生なら確か宿題が出ていたはずだ。

有斗が自席に向かうのを横目に、そうなんだ、と相槌を打つ。

その時だった。


「そういえば、美月ちゃん、昨日谷瀬くんと一緒にY駅にいなかった?」


全く邪気のないメグちゃんの声が、やけに教室に大きく響いた。

え、と息が止まりそうになったのも束の間、「遠目に見ただけだから、声はかけられなかったんだけど〜」とメグちゃんの言葉が続く。