「初めは、頼りになる先輩として慕ってました。

体育祭の時だって、そんな気持ちだったから美月先輩に一緒に来てほしいって頼めたんです」


一つひとつ、言葉を選んで声に乗せていることが伝わってくる。

そこに含まれる熱と、必死に隠そうとされている緊張感。


「でも、ある時……嫉妬、したんです。誰よりもあなたの傍にいる人に」

「え……」

「その人を差し置いて、おれが1番近くにいたいと思いました。ただの先輩後輩としてじゃなく、特別な立場が欲しいと思った」


その言葉が指す人物が、有斗だということは考えなくてもわかる。

昔から誰よりも近くにいた有斗が、誰よりも敵意を剥き出しにするのが谷瀬くんで……。


「えっ、と……」


何を言おうか定まらないまま口を開いたわたしを、谷瀬くんがそっと手で制す。


「わかってます。おれのこと、ただの後輩としか見てないって」