「美月先輩は? キョウダイいるんですか?」

「いないよー。一人っ子」

「意外。絶対弟か妹いると思ってました」


運ばれてきたケーキやティーフーズを食べながら、たくさん話をした。

会話に躓かなかったのは、終始谷瀬くんが会話をリードしてくれていたからだと思う。


「美味しかったー!」

「美味しかったですね。いいお店教えてくださってありがとうございます」


大きくなったお腹を抱えて外に出る。

10月の空は秋晴れで、刷毛で薄く広げたような雲が高いところで浮かんでいた。


「本当にご馳走になって良かったの?」

「もちろん。今日は美月先輩のお疲れさま会なんで」

「でも」

「おれ、普段部活ばっかりでお金の使い道ないから、有意義に使えて嬉しいんです。だからほんと、気にしないでください」


にっこりと笑って、わたしの申し訳なさを断つ。

すごいなぁ。年下なのに、気遣いの人だなぁ。


「じゃあ、お言葉に甘えて。何かでまたお返しさせてね」