不思議に思って首を傾げるけれど、有斗はふいっと顔を背けてドアノブに手をかけた。


「じゃあ、俺行くわ。気をつけて行ってこいよ」

「ありがと。有斗もね」


ひらひらと手を振って有斗が部屋を出て行く。

有斗も二次試験来週のはずなのに、随分余裕そうだなぁ……。

扉の向こうで玄関の開く音を聞きながら、わたしは支度する手をまた動かした。




13時50分に待ち合わせして向かった洋風のカフェは、なんと谷瀬くんが予約をしてくれていた。

しかも、それだけじゃなく。


「このショーケースの中から一つ、どれでも好きなケーキを選んでいいみたいですよ」

「どれでも!? 迷うなぁ〜!」


色とりどりのケーキが並ぶショーケースの前で、思わずヨダレが溢れそうになるのを必死に留まる。

谷瀬くんはなんと、席だけでなく、アフタヌーンティーの予約までしてくれていた。


「チョコ系のケーキだけでもたくさんある。どうしよう」

「チョコ系好きなんですか?」

「うん、好き。いつもチョコのばっかり選んじゃう」


たくさん迷って、生チョコが乗っているケーキにした。

谷瀬くんはフルーツたっぷりのタルトケーキを選んでいた。