外は既に薄暗く、遠くの人の影がぼんやりとだけ見えた。


「真由美ちゃんも勉強してたの?」

「うん。初めはメグちゃんも一緒だったんだけど、お母さんから連絡あって先に帰っちゃって」



教室にはいなかったから、食堂とか図書室とか、別のところでやってたんだろう。

なんてぼんやり考えながら歩く。


「美月ちゃんが1人だったってことは、有斗くんは先に帰っちゃったの?」


不意に発せられた名前に、わたしは思わず息を止めた。

メモの内容が頭に浮かんで、一度は落ち着いた心臓が、また一気に駆け足になっていく。


「うん。遅くなるかもしれないから、先に帰っててって言ったんだ」


わたしがいないと声を掛けられたりするから嫌だと言って、極力わたしと一緒に行動する有斗。

そんな有斗がいないことを、ただ話のネタとして挙げただけの真由美ちゃんに、わたしは世間話をするような調子で返答できただろうか。

うまく、笑えただろうか。


「待ってもらうのも、気になっちゃいそうだもんね」

「そうなんだよね。有斗には悪いけど、先に帰ってもらった方が気兼ねなく対策に時間をかけられるから」