それでも。


「……っ」


思っていたよりもずっと近くから向けられた悪意に、全身が粟立った。──怖い。


この送り主は一体誰なの。

どこからわたしのことを見てるの。

気にしないでいようと思ったのに、あのときの意思がガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。

目の前が真っ暗になりかけた瞬間、


「美月ちゃんも今帰り?」


不意に名前を呼ばれて、わたしは反射的に紙をぐしゃりと握り込んだ。

振り返ると、真由美ちゃんが立っている。


「ま……真由美ちゃんか。びっくりした……」

「ごめん、いきなり声かけて驚かせちゃったね」

「ううん、わたしがぼうっとしてただけだから」


バクバクと暴れる心臓を抑えようと、一つ大きく息を吸い込む。

わたしの後ろを通って自分の靴箱へと歩いていく真由美ちゃんに、紙を見られないよう慌てて鞄に突っ込んだ。


「美月ちゃんも残って勉強してたの?」

「あ……勉強っていうか、小論文と面接の対策を。明日、試験本番だから……」

「えっ、そうなの? ドキドキだね」


真由美ちゃんも電車通学だというので、並んで学校を出る。