「やった。おれ、その日練習午前中で終わるんです。もしよかったら、試験お疲れさま会しませんか」


お、お疲れさま会? この言い方だと、2人でってこと!?

思いがけないお誘いに困惑しているうちに、甘いものでもいいし、ご飯でもいいし、と指を折りながら谷瀬くんが言う。


「って、試験直前に困らせちゃってたからすみません。おれ、自分のことしか考えられてなかったかな」


変に間を置いたせいで、谷瀬くんに気を遣わせてしまった。

慌てて顔を上げるけれど、谷瀬くんは穏やかに微笑んだままだった。

その真摯な眼差しに、思わずどきっとする。


「日曜日、予定入れずに空けておくので。美月先輩がよかったら、試験が終わってからでもいいので連絡ください」


そろそろチャイム鳴るので戻りますね、と言い置いて、谷瀬くんは颯爽と言ってしまった。

その残り香のような気配を感じながら、わたしは呆然と立ち尽くす。