「出たって、俺はオバケか何かか」

「ゴ、ゴメン。……でも、ほんとに映ったね……」


わたしが口にする言葉達は、有斗に届けるというよりも惚けてこぼれ落ちていくみたいだった。


「一瞬だけだけどな」

「初回の登場が一瞬だけなんて、めちゃくちゃ重要な人物ってことじゃないの?」

「さぁ? どうだろうな」


ドラマは既に主題歌が流れ始めている。有斗がMVに出演している曲だ。

流れてくるキャストの名前の中には、しっかりと『神崎有斗』の表記があった。


「はぁ……すごいなぁ……」

「まだ言ってんの?」

「だって。ほんとにすごいじゃん」


胸の高鳴りを感じる。高揚している。素直にすごいと思う。

でも。


「……さて! ドラマも終わったことだし、帰ろっかなっ」


明るい声を出して、勢いよく立ち上がる。

「送っていく」と言って立ち上がろうとする有斗を、わたしは制した。


「いいよ。すぐ隣だし」

「でももう遅いじゃん。すぐ隣だから気遣うなよ」

「大丈夫だから!」


明るく言ったつもりだったのに、ことの外大きく鋭くなってしまった口調に、有斗も、そしてわたし自身も驚いていた。