「何でもないよ。小さい頃のわたし、超かわいーって思っただけ」

「なんだそれ」


ふっと口角を持ち上げて、有斗はまた文庫本に視線を戻す。

無言でも平気。お互いの存在を感じながら、同じ空間を共有するのは心地いい。

でも、有斗の気持ちはわたしとは違って明確で、わたしが答えを出すことを待っている。

それなのに一向に答えを見つけられないでいるわたしは、一体どうすればいいんだろう……。




22時から始まったドラマは、人気俳優・前田マサキを主演に据えたサスペンスだった。

前半では警視庁内に新たに新設された部署に、次々とメンバーが集められ、起こった時間を解決する。

そして後半、全編にわたって関わってきそうな事件の存在と、ちらりと映される1人の男子高校生。


「うわっ、出たっ!」


特殊なカメラで撮っているのか、全ての姿が映ったわけではなかったけれど、断言できる。あれは有斗だ!