「ご飯ありがと。美味しかった」

「切って鍋に入れただけだけど」

「それだってちゃんと料理じゃん。おかげで休めました」


洗い物までしてくれた有斗に向かってぺこりと頭を下げる。

有斗は食後のお茶を淹れながら、ふと壁にかかっている時計を見上げた。


「放送、うちで見んの?」

「だめ?」

「だめじゃないけど。親と見るのはさすがに恥ずい」


そういえば、雑誌に載り始めた頃も似たようなことを言ってたなぁ……。

わたしがドラマや雑誌に出る日なんてのは来ないので、一生わからない感覚だけど、有斗が言うなら仕方ない。

じゃあ帰るよ、と言う前に、有斗の視線が扉の向こうに向けられる。


「うちで見るなら、俺の部屋行こーぜ」


マグカップを両手に持った有斗が扉の前に立って言うので、わたしは素直に頷いた。




放送まで残り30分となった頃、有斗の部屋にある本棚が目についた。

大きく分厚い背表紙。見覚えのあるアルバムだった。


「ね、あれ見ていい?」


隣でベッドにもたれている有斗に訊ねると、視線だけをこちらに寄越してこくりと頷いてくれる。