今日の夕飯の買い出しだ。


「何食べたい? あんまり難しいものじゃなかったら作るよ」


訊ねたわたしの手からひょいっとカゴを取り上げて、有斗が先を歩き始める。

それから、入り口付近の野菜売り場をふらふらと物色し、白菜を手に取った。


「有斗?」

「涼しくなってきたし、鍋でもいいだろ?」

「え?」


そうしているうちにも、にんじんや長ネギをカゴにぽいぽい放り込んでいく。


「鍋くらいなら俺でも作れるから。出来るまで休んでろ」


空いているほうの手の親指が、そっとわたしの目の下に触れた。

さっき、電車で不調を見抜かれたことを思い出す。


「ううう……。ありがとう」

「おう」

「でもドラマは見るからね……」

「……そーかよ」


ぶっきらぼうに応えて、有斗はスタスタと通路を歩いていく。

そのシャツの背中を眺めては、大切にされてるんだなぁ……と実感する。

でも、どうして有斗は、そんなにもわたしのことを想ってくれているんだろう……?




今日の夕飯は、神崎家で食べた。

有斗パパも有斗ママもまだ帰ってきていないけど、ドラマにはなんとか間に合わせる!って言ってたから、今日はいつもより早いのかもしれない。