「うん」

「感情込めたりとか、よくわかんねぇけど難しそう」


全方位から視線を浴びることにわたし達はもう慣れっこなので、お構いなしに話し続ける。

今日、この学校だけに焦点を当てれば脅威の高視聴率を叩き出すだろうなぁ。


「まぁ……俺なりに準備して挑んだけど、ボロボロだったな。夏休みに入った瞬間からみっちり演技指導受けて、やっと何とか形になったって感じ」


自虐混じりの口調。

有斗がこんなふうに言うってことは、想像の何倍も大変だったんだろうなぁ……。


「昔っから、有斗は何でも要領よくこなしてたからなー。有斗にも本気出さなきゃいけないことがあるってわかって、満足だわ」

「はは、何だよそれ。俺いつも結構真面目だけど?」

「よく言う」


メンズ2人の軽口を、わたしと結子は楽しく聞いていた。

昇降口に差し掛かろうとしたところで、


「あ、美月ちゃん」


よく通る声がわたしを呼んだ。

引かれるように振り返ると、鞄を肩にかけたメグちゃんが立っていた。